Wilson は、「PRO LABS (プロラボ)」と呼ばれるツアープロ向けのラケットを、我々一般ユーザーに対しても数量限定で発売しました。
多くの方にとって、「プロラボって何なの?」「市販ラケットとは違うの?」「どこで買えるの?」など疑問は尽きないと思います。
そこで今回は、この「PRO LABS」について分かりやすく解説します。また、市販ラケットや「PRO STOCK」との違いなどについても解説します。
この記事を読む事で、「PRO LABS」とは何なのか、市販ラケットとの違いは何か、プロ選手が使用しているラケットとの違いなどについて理解することが出来ます。
ぜひ最後までご覧ください。
プロスペックのラケットを自分で使える使えないはとりあえず置いておいて、私が個人的にも非常に興味があるため、今回記事として取り上げてみました。
Wilson PRO LABS (ウイルソン・プロラボ)
今回、「PRO LABS」として全 3 機種、5 モデルが発売されます。PRO STAFF、BLADE、ULTRA の 3 機種です。BLADE、ULTRA については、それぞれ 2 モデルとなります。
考察の前に、まず【日本人唯一の Wilson Official Stringer 細谷理のテニスショップ「On Court (Racquet)!」のチャンネル】様の「PRO LABS」に関する動画をご覧下さい。
この動画では、細谷さんに加え、Wilson の道場さんと横山さんを交え「PRO LABS」について非常に分かり易く解説してくれています。
Wilson の方が「PRO LABS」について解説している事から、メーカー的にも公式の内容となっており、正確な情報を得たい方はぜひご覧下さい。
Wilson PRO LABS に関する動画
ちなみに、「On Court (Racquet)!」様は、日本人唯一の Wilson Official Stringer である細谷理さんのテニスショップです。細谷さんは、全米オープン等のグランドスラムでストリンガーを担当し、現地で錦織選手を始めとしたプロ選手のストリンギングを行っている非常に優秀な方です。
「PRO LABS」とは?
さて、「PRO LABS」とは一体何なのでしょうか?
結論を先に言うと、(メーカー側の位置付けとしては) 『PRO LABS とは、選手のために作ったラケットのベースモデル』のことです。
しかしながら、この「PRO LABS」というラケットの役割や位置付けを理解するためには、メーカーにおけるラケットの種類について理解する必要があります。
「PRO LABS」 とは、選手のために作ったラケットのベースモデルの事です。
“メーカーにおける「ラケット」の種類“ について
このセクションでは、メーカーにおけるラケットの種類について解説します。
これを理解することで、今回発売される「PRO LABS」が、市販ラケットや選手専用ラケット (PRO STOCKと呼びます) に対して、どの様に異なるのかについて理解できます。
さて動画内でも言及されていましたが、Wilson のラケットに関しては、世の中に存在しているラケットには大まかに3種類あるという事が分かります。(ツアープロや我々一般ユーザーが使用しているラケットという意味で)
市販ラケット、PRO LABS (プロラボ)、PRO STOCK (プロストック) の3種類です。
市販ラケットは我々がショップで購入できるラケット、PRO LABS (プロラボ) が今回発売されたラケット、PRO STOCK (プロストック) は PRO LABS (プロラボ) をベースとして Wilson のラケット職人が選手個人向けに加工してカスタマイズされたラケットになります。
ここが重要なポイントです。
「PRO LABS」と「PRO STOCK」の違い
各プロ選手は、この「PRO LABS」ラケットをカスタマイズする事で自分に合ったラケットとして使用しているという事です。
そのような「PRO LABS」をカスタマイズしたラケットの事を「PRO STOCK」と呼んでいます。
ところで、これまでプロ使用モデルと謳って市販されているラケットでも、実際には選手が使用するラケットとは異なるスペックのラケットでしたが、この「PRO LABS」はツアープロが使用しているラケットと同じ構造や形状となります。
「PRO LABS」と「市販ラケット」の違いについては後述します。
ただし、実際のプロプレーヤーの使用状況についての事実関係が公表された Wilson に限って言えば、先述のとおりツアープロの多くがこういったプロスペックのラケットである「PRO LABS」をもとに各自でカスタマイズして使用しているのが現状であり、「PRO LABS」は厳密な意味で特定のプロ選手が使用しているラケットのスペックではないという事は理解しておく必要があります。(上記のとおり、こういった選手向けにカスタマイズされたラケットを PRO STOCK と呼びます)
とは言うものの、今回発売される「PRO LABS」のラケット群は、素材 (ベース) としてプロに提供されているラケットと同等のものであることから、プロが使用しているラケットと同様のフレーム (形状・構造) やペイント (塗装)、基本スペック (ただしカスタマイズ前に限る) に興味がある人にとっては、非常に魅力的なものになるでしょう。
逆に、「PRO LABS」をそのまま使用している選手がいる可能性もあり、その場合にはプロ選手が使用しているラケットそのものであるとも言えます。
つまり、上記をまとめると、全ては各選手それぞれのカスタマイズ度合いによりそれぞれの異なる部分が変わるため、「PRO STOCK」との違いについては一概には言えないという事です。
ちなみに、「PRO LABS」をベースとして、ストリングパターンすらも変えている選手もいるとのことです。この場合、ラケットに対する穴あけ加工が発生するので、先出の Wilson の職人による緻密な加工が必須なのは言うまでもありません。
ちなみに、市販モデルのラケットを加工・カスタマイズして使用しているプロプレーヤーもいるとの事です。
「PRO LABS」と「市販ラケット」との違い
PRO LABS と PRO STOCK の違いについては分かりましたが、では PRO LABS と市販のラケットはどのように違うのでしょうか。
例えば、PRO LABS の「BLADE PRO 18×20 」と市販ラケットの「BLADE 98 18X20 V7.0」を比較してみます。
前者の「BLADE PRO 18×20 」ではフレームにオーソドックスなボックス形状を採用していますが、後者の市販ラケットは X-Loop という独自のフレーム形状を採用しています。
フレーム厚も異なり、前者が 22mm であるのに対し、後者は 21mm です。
また、重量は両者 305g と同じですが、バランスは前者が 325mm で後者が 320mm と異なります。
フレーム形状とバランスが異なる訳ですから、両者は似て非なるラケットという訳です。
つまり、BLADE PRO に関して言えば、ボールの飛び、スピン量、ホールド感、打球感などのラケットの持つ特性が、市販モデルとは異なる性質のラケットであると言えます。(全く異なるという事は無さそうですが)
「PRO STOCK」について
PRO STOCK について捕捉情報です。
プロストックが出来るまで
中国の工場で作られたプロラボのラケットが、シカゴのイノベーションセンターに送られる。
ラケット職人のロン・ロッキーさんの手により、選手個人の要望通りにカスタマイズされる。
選手の元に届けられる。
錦織圭選手のラケットを例にすれば、重さ、バランス、グリップの形、ウレタンの長さなどを加工して選手に届けられる。
PRO STOCK は買えるのか?
ネット上などで、「PRO STOCK」とされるラケットが出回っている様です。
しかしながら、メーカーの見解としては、プロ選手専用の「PRO STOCK」ラケットが公式に市場に出回ることはないとの事です。
もしその様なラケットが販売されていたとすれば、選手が誰かにあげた物が何らかの経緯で市場に流出したか、その他公式ではない経路で流出している可能性が高いとのことです。
いずれにしても、ネット等で「PRO STOCK」として販売されている場合でも、メーカー公式のラケットではない為、製品の信憑性に疑問が残ることから購入には注意が必要です。
Wilson PRO LABS の情報
PRO LABS の情報源について
Wilson の国内総販売代理店を務めるスポーツ用品販売「アメアスポーツジャパン」(東京) のウイルソンブランドのテニスサイトには、現時点で「PRO LABS」に関するスペシャルサイトなどラケットを特集をしているサイトが存在しません。
Wilson の広報の方がテニスショップなどとコラボして YouTube 動画などを配信している程度の情報開示となっています。
そのような理由から、「PRO LABS」の情報を得るにはこの記事の冒頭の動画が分かり易いので、改めてオススメいたします。
また、現状 Wilson のホームページ上では、各ラケットのスペックの詳細のみが確認できる程度です。
これは、メーカー側が「PRO LABS」に関する大々的な宣伝行為や情報開示を控えている事によると推測できます。
恐らくこの様な特殊なスペックのラケットを望まない (扱えない) ライトなユーザー層に間違って製品が届いてしまわない様に配慮した結果だと推察できます。この様なラケットを本当に望んでいるユーザーは、プロプレーヤー、もしくはそれに準じたユーザーであり、その様な人は情報感度が高く、自ら調べて辿り着くでしょうし、またテニス関係者を通して情報を得るものとの判断によるところが大きいでしょう。
いずれにしても、ライトな一般プレーヤーが扱えるラケットではない為、メーカー側の責任として、そういったユーザー層に製品がリーチしてしまわない様な配慮だと言えます。これは、至極賢明な判断だと言えます。
そういった配慮もしつつ、しかしこういったプロスペックのラケットを求めるコアなユーザーやプレーヤーに届けたいというメーカー側の誠意が感じられます。
PRO LABS の製品展開
冒頭でもお伝えしましたが、今回の「PRO LABS」のラケット群は全 3 機種 (シリーズ)、5 モデルの展開となっています。
具体的には、Pro Staff Six.One 95 が 1 本、Blade Pro シリーズが 2 本、Ultra Pro シリーズが 2 本の合計 5 モデルです。
米国サイトについて
米国サイトには「PRO LABS」を1ページにまとめたサイトが存在するため、「PRO LABS」のラインナップの全体像を確認したい場合には、下記の米国サイトをご覧いただくのも一つの方法です。
米国の「PRO LABS」商品サイトはこちら。
尚、米国の Wilson のショッピングサイトでは日本への発送が対象外となっているため、米国 Wilson のショッピングサイトからは「PRO LABS」ラケットの購入はできません。
PRO LABS のスペック
PRO STAFF SIX.ONE 95
日本の Wilson テニスのサイトから、以下の情報をご確認ください。
ラケットの詳細ページはこちら。
SPECS
発売日 | 2021年3月 |
対象 | Player Type: Attacker/Power Level: Medium |
素材 | BLX + ブレイディッド・グラファイト + ケブラー |
重さ(ウエイト) | 平均331g |
バランス | 平均30.5cm |
サイズ/レングス | 27.00インチ |
フェイス面積 | 95平方インチ |
フレーム厚 | 22.0/22.0/22.0mm |
ストリング・パターン | 18×20 |
グリップ | PRO PERFORMANCE |
グリップサイズ | G2(WR044011U2)/G3(WR044011U3) |
グロメット品番 | 品番未確定 |
バットキャップ品番 | 品番未確定 |
適正テンション | 50-60p |
製造国 | 中国 |
米国サイトの Pro Staff Six.One 95 (18×20) (米国名) はこちら。
BLADE PRO Series
日本の Wilson テニスのサイトから、以下の情報をご確認ください。
BLADE PRO 18×20
ラケットの詳細ページはこちら。
SPECS
発売日 | 2021年3月 |
対象 | Player Type: Attacker/Power Level: Low |
素材 | BLX + ブレイディッド・グラファイト |
重さ(ウエイト) | 平均305g |
バランス | 平均32.5cm |
サイズ/レングス | 27.00インチ |
フェイス面積 | 98平方インチ |
フレーム厚 | 22.0/22.0/22.0mm |
ストリング・パターン | 18×20 |
グリップ | PRO PERFORMANCE |
グリップサイズ | G2(WR059811U2)/G3(WR059811U3) |
グロメット品番 | 品番未確定 |
バットキャップ品番 | 品番未確定 |
適正テンション | 50-60p |
製造国 | 中国 |
米国サイトの Blade Pro (18×20) (米国名) はこちら。
BLADE PRO 16×19
ラケットの詳細ページはこちら。
SPECS
発売日 | 2021年3月 |
対象 | Player Type: Attacker/Power Level: Low |
素材 | BLX + ブレイディッド・グラファイト |
重さ(ウエイト) | 平均305g |
バランス | 平均32.5cm |
サイズ/レングス | 27.00インチ |
フェイス面積 | 98平方インチ |
フレーム厚 | 22.0/22.0/22.0mm |
ストリング・パターン | 16×19 |
グリップ | PRO PERFORMANCE |
グリップサイズ | G2(WR059711U2)/G3(WR059711U3) |
グロメット品番 | 品番未確定 |
バットキャップ品番 | 品番未確定 |
適正テンション | 50-60p |
製造国 | 中国 |
米国サイトの Blade Pro (16×19) (米国名) はこちら。
ULTRA PRO Series
日本の Wilson テニスのサイトから、以下の情報をご確認ください。
ULTRA PRO 97 18×20
ラケットの詳細ページはこちら。
SPECS
発売日 | 2021年3月 |
対象 | Player Type: All Courter/Power Level: High |
素材 | ハイ・パフォーマンス・カーボン・ファイバー+BLX |
重さ(ウエイト) | 平均305g |
バランス | 平均31.5cm |
サイズ/レングス | 27.00インチ |
フェイス面積 | 97平方インチ |
フレーム厚 | 19.0/19.0/19.0mm |
ストリング・パターン | 18×20 |
グリップ | PRO PERFORMANCE |
グリップサイズ | G2(WR036911U2)/G3(WR036911U3) |
グロメット品番 | 品番未確定 |
バットキャップ品番 | 品番未確定 |
適正テンション | 50-60p |
製造国 | 中国 |
米国サイトの Ultra Pro v3 (18×20) (米国名) はこちら。
ULTRA PRO 97 16×19
ラケットの詳細ページはこちら。
SPECS
発売日 | 2021年3月 |
対象 | Player Type: All Courter/Power Level: High |
素材 | ハイ・パフォーマンス・カーボン・ファイバー+BLX |
重さ(ウエイト) | 平均305g |
バランス | 平均31.5cm |
サイズ/レングス | 27.00インチ |
フェイス面積 | 97平方インチ |
フレーム厚 | 19.0/19.0/19.0mm |
ストリング・パターン | 16×19 |
グリップ | PRO PERFORMANCE |
グリップサイズ | G2(WR065411U2)/G3(WR065411U3) |
グロメット品番 | 品番未確定 |
バットキャップ品番 | 品番未確定 |
適正テンション | 50-60p |
製造国 | 中国 |
米国サイトの Ultra Pro (16×19) (米国名) はこちら。
注意すべき点
数量限定販売・特定の店舗のみで購入可能
「PRO LABS」のラケットは、数量限定販売 (各ラケット 100 本程度)、取扱店舗は 4 店舗のみです。以下の店舗のみで購入可能です。
「PRO LABS」のラケットは、数量限定販売です。気になる方やどうしても欲しい方は、今後の継続販売を行う可能性については不明である為、早めに購入することをオススメします。
また、取扱店舗は 4 店舗のみで、オンラインでの販売をしていない店舗もあるため、その場合には直接ショップまで連絡する必要があります。
難しい?
市販ラケットは、良い意味でも悪い?意味でも、ラケットがプレーヤーをサポートするようなテクノロジーを搭載しています。
従って、市販ラケットは各モデルのラケットの特徴がより際立つように設計されている事が多いですが、「PRO LABS」ではそういったプレーをサポートする様な特徴的なテクノロジーは極力削ぎ落とし、それぞれのラケットが持つピュアなフィーリングを重視しているようです。
つまり、基本的にはラケットのサポートが少ないという事らしいです。
これに関しては、試打するしか無いですし、本人の感じ方もあるので、ラケットの印象や評価は割愛いたします。
高い!?
このような経緯で市販化されたラケットですから、当然の事ながら一般的な市販ラケットよりも高価です。税抜き価格で 1.5 倍程度の価格となっていますが、実際にショップで購入する場合には、もう少し購入価格に差がつきそうです。
ショップによって、通常の市販ラケットは大きな値引きがありますが、「PRO LABS」ラケットは購入者が限定されるモデルであるため数量限定販売となっていることから、ショップでの値引きもあまり期待できません。基本的には値引き販売はしないと思います。
そのような理由から、2 本持ちなどの用途ではお財布には決して優しくないですし、それなりの経済的負担もありそうです。
ただ、こういった特殊なモデルが好きな人や実際に使用した時の印象が良い方などはその限りではありませんね。
まとめ
一般的な市販ラケットとは用途や対象プレーヤーが異なるため、これらのラケットの恩恵を受けることができるプレーヤーはごく限られていると思いますが、一テニスファンとしては、ぜひ一度は試し打ちしてみたいものです。
また、高価なラケットなので、気軽にお試しという訳にはいきませんが、機会がありましたらレビューなどもしてみたいと思います。
いずれにしても、本物のプロスペックラケットが手に入る環境が整ったことは、ラケット選びの選択肢が増えることから非常に嬉しい限りです。
Wilson の販売代理店であるアメアスポーツジャパン様のご尽力に感謝いたします。
ちなみに、「Wilson」の日本語表記は、「ウィルソン」ではなく「ウイルソン」が正しい表記となります。これはメーカー公式サイトの表記から確認できます。メーカー情報の検索などの際には注意しましょう。
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